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ケーラー「フルートのための35の練習曲 第2巻」第7番を読む

 

第2巻の解説を最初から読みたい方はこちら】 

 

ケーラーの2巻も折り返しを迎え、今回は第7番の解説です。

 

軽やかでかわいらしい曲調なので気に入る方も多いと思います。

 

ところどころに難しいポイントが現れるので、しっかり押さえておけるように見ていきましょう!

 

 

ケーラーのプロフィール・第1巻の解説はこちらから

 


 

調号はシャープが二つで、最初の分散和音からニ長調(D-dur)だと分かります。

 

そして拍子が3/8拍子。

 

第1巻の第9番でも解説したとおり、3/4拍子は1小節を3拍で数えることが基本ですが、3/8拍子は1小節を1拍で数えます。

 

今回は速度がAllegretto(Allegroより少し遅く)なので、ギリギリ1拍で数えられるくらいのテンポが望ましいですね。

 

 

となると「ギリギリ1拍で数えられるくらいのテンポ」とはどのくらいなのかという疑問が出てくると思います。

 

例えば、8分音符=160なら三角形を描く指揮の振り方ではなく、円を描く(=1小節を1拍で示す)振り方で問題なさそうです。

 

でも8分音符=140だと遅すぎる感じがしますよね。

 

なのでその間くらいが多くの人にとって「ギリギリ1拍で数えられるくらいのテンポ」になるはずです。

 

 

 

最初の小節にある「e ben staccato」は十分なスタッカートでという意味です。

 

途中から音符の上のスタッカートは省略されていますが、曲調が変わるまでは軽やかなスタッカートをキープしましょう。

 

 

 

第7番のキーになるのが、この小節をまたぐスラーです。

 

第1巻から説明しているとおり、スラーには「スラーがかかっている頭の音が一番強い」という性質があります。

 

この“強い”というのは音量だけでなく、他の音と比べたときの重要度を意味します。

 

 

そしてもう一つ見逃してはいけないのが小節内の重要度の差です。

 

何分の何拍子であろうと、小節の最初の拍が一番強いというルールがあります。

 

このルールを一時的に変えられるものこそがスラーやアクセントなどのアーティキュレーションです。

 

 

今回のスラーは小節の最後の音に重さを出すことと、次の小節の最初の音を軽くするために書かれています。

 

それによって「1小節目>2小節目」という力関係ができ、2小節で1つのフレーズという広い視野での音楽表現ができるようになります。

 

 

 

 

ラレンタンド(rall.)の部分はテンポが遅くなるので、1小節を3拍で数えた方が演奏しやすいと思います。

 

階段のように一つひとつの音を上がっていくというよりは、スロープを上がるような滑らかなイメージを持って演奏してみましょう。

 

 

フレーズの始まりの高い「レ」は、何もしなくても大きく鳴りやすい音です。

 

拍頭の音なのでしっかり鳴らしても問題はないのですが、今回はスラーをうまく利用して軽く吹いた方が曲調に合った音が出しやすくなります。

 

 

 

ここは細かい動きが多くてつまづきやすいポイントですね。

 

分解してみると 「ソ→ファ#」と「ラ→ソ」という動きがメロディーのメインになっているのが分かります。

 

このように音を変えて同じメロディーを繰り返すシークエンス(独:ゼクエンツ)という形は、ケーラーの練習曲に何度か出てきましたね。

 

 

 

次に出てくるのが2オクターブ近い跳躍…ハードですね(笑)

 

最初のほうは低音が出ていたのに、後半になるにつれて鳴らなくなるという方も多いのではないでしょうか。

 

それは低い音を出そうとするあまり、息が下を向きすぎて楽器の中に多くの息が入ってしまうことによっておこる現象です。

 

 

フルートはエアリード楽器なので、息の半分を楽器の外に出さないと音が出ません。

 

なので特に低音域を鳴らしたいときには、息の向きを上げるくらいのつもりで吹いてみましょう。

 

また低い音はスタッカートで吹くのが難しいので、a tempoに入った時にスタッカートが間延びしていないかチェックすることも忘れずに!

 

 

 

はい、また出てきましたシークエンス!ここ難しいですよね…

 

でもみんなミスするところなので、難なく吹けたらめちゃくちゃ褒められるポイントです(笑)

 

難しいと感じる原因は運指だけでなく、半音ずつ上がる分散和音に耳が追い付いていないことにあります。

 

まずは和音の変化に耳を傾けながらゆっくりとスラーで吹く練習をしてみましょう。

 

 

しかし「incalzando=追い立てるように、だんだん強くしながらだんだん速く」という指示が私たちを追い立ててます…

 

何度も練習してもテンポアップなんて無理!という方は、シークエンスの始まりをちょっとだけ遅く吹くのも手段の一つです。

 

 

 

フェルマータの後は調号がシャープ一つになり、前回も出てきた「L'istesso tempo(リステッソ・テンポ)」が出てきます。

 

今回も拍子は変わっていませんが、最初と同じテンポで吹いて大丈夫です。 

 

 

ここからは前半と打って変わって大きなスラーがたくさん出てくるなめらかな曲調になります。

 

「espressivo=表情豊かに、感情をこめて」という指示もあるのでテンポが遅くならないように注意が必要です。

 

また後半が全く同じメロディーで音量がピアノになるので、最初はたっぷりと息を使ってフォルテらしく演奏していきましょう!

 

 

※ちなみに最初の2小節はスラーが分かれていますが、それ以降は同じメロディーにスラーは1つだけ 書かれているのでミスプリントの可能性大です。

 

 

 

フェルマータの後は前半と全く同じ流れなので割愛しまして、最後のフォルティシモの後を見ていきましょう。

 

a tempoから2小節目の高い「ファ#」がなかなか鳴らなくて困っている方、多いと思います。

 

息の向きやスピードを調節しても鳴らない場合は、指に注目してみましょう。

 

 

2オクターブ目の「ラ」から3オクターブ目の「ファ#」への運指は左中指、薬指と右薬指を動かします。

 

特に薬指は動かしにくい指なので、どうしても動きにばらつきが出て音を出す瞬間にキイがふさがっていないことがあります。

 

ふさぐべきキイがふさがっていなければ、いくら息のスピードを上げても音は出ません。

 

これはコンマ何秒以下のズレなので、頭部管を左肩において手元を見ながら指を動かす練習などがおすすめです。

 

左中指を離すタイミングが肝の場合もあるので、まんべんなくチェックしてみてください。

 

 

 

最後の最後に高音域で「morendo=だんだん弱くしながらだんだん遅く、消えるように」という苦行…!(笑)

 

これは高音域をどう吹くかよりも、手前の中音域をどう吹くかがとても重要です。

 

 

今回は1オクターブ目の「レ」から3オクターブ目の「ファ#」まで上がっていますよね。

 

低音域・中音域・高音域と上がっていくなかで、それぞれの音域をベストな息の使い方ができているかを確認しましょう。

 

極端な話、中音域は低音域と同じような息のスピードでも音は出ますが、そのまま高音域に上がることはかなり難しいです。

 

むしろ中音域で音が裏返る直前まで息のスピードを上げておけば、びっくりするくらい高音域が楽に出るのでやってみてください♪

 

 

まとめ

 

第7番は前後編分けずに済みましたね。

 

見開き1ページの曲ですが比較的内容は軽めなので、より自分の音にフォーカスした練習ができる曲になっています。

 

スタッカートの粒は音域関係なくそろっているか、中音域がきちんと鳴っているかなどを確認してレベルを底上げしていきましょう!