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ケーラー「フルートのための35の練習曲 第1巻」第1番を読む

 

YouTubeの参考演奏動画や概論をまとめたものはよく目にするけれど、具体的な楽譜の読み方を解説している人は少ない(というかいない?)と思ったので、要点だけにはなりますが解説していこうと思います。

 

―目次―

  1. 作曲者のプロフィール
  2. 今回使用する楽譜
  3. いざ解説!
  4. まとめ

 


作曲者のプロフィール

『フルートのための35の練習曲 Op.33』を作曲したエルネスト・ケーラーは、イタリア生まれのフルート奏者です。

 

同じくフルート奏者だった父のヨーゼフ・ケーラーから音楽を学びました。

 

 

オーケストラの首席奏者を務める傍ら、数多くの練習曲やフルートのための作品を作曲していました。

 

その一つである「フルートのための35の練習曲」は、コンクールの課題曲にもなるほど評価と認知度の高い作品です。

 

 

初級者でも取り組みやすいシンプルなメロディを使って、さまざまなテクニックを身につけられるようになっています。

 

そのため、ただ吹くだけでは単調になりがちなので、楽譜を読み解いて魅力的に演奏する方法を見つけていきましょう!


今回使用する楽譜

 

解説で使用しているのは、国際楽譜ライブラリープロジェクト(IMSLP)で公開されているパブリックドメインの楽譜です。

 

ケーラーのこの練習曲は、多くの出版社から販売されています。

 

私が学生だった頃は、Carl Fischer社かドレミ楽譜出版社が主流だったように思うのですが、ムラマツフルートのサイトにはCarl Fischer社の楽譜は間違いが多くあるという注意書きが…。

 

どれを選べばいいか迷われるかもしれませんが、もしレッスンに通っているのであれば、先生と同じ出版社のほうが差異がなくてやりやすいかと思います。

 

今回使用している楽譜にもミスがあるかもしれませんが、ご容赦くださいませ…

いざ解説!

 

それではようやく楽譜を読んでいきましょう…!まずはざっくりと全体を見て曲の流れを把握します。

 

調号・拍子を確認、テンポは「Allegro Moderato」なのでそこそこ速いようですね。でも「dolce=甘くやわらかに」なので、元気の良さよりは可愛らしさがほしいように感じます。

 

 

 

アーティキュレーションは、8分音符3つにスラーがかかって最後の1つにスタッカートがつく形が基本です。

 

タンギングをする音はスラーの中にある音よりも目立つので、4つ続く8分音符の1つ目と4つ目がより聴かせたい音だということが分かります。

 

そして、後半になるとアーティキュレーションのパターンが変わります。

 

8分音符2つずつにかかるスラーと、小節あたまの8分音符がスタッカートでその後は全てスラーという形が繰り返されていきます。

 

2つずつのスラーは畳みかける効果があるので、フィニッシュに向けて緊張感や高揚感を高めるのに最適です。

 

ただし、赤い矢印のところのように同じ音でスラーをかけ直すパターンはつながっているように聞こえやすいので、はっきりとしたタンギングで吹くように心がけましょう。

 

 

 

そして、ここは2小節のメロディが繰り返されます。

 

特に強弱記号はありませんが、ただ同じメロディを2回吹くだけでは面白くないので何か変化を持たせたいところ。

 

定番は、1回目よりも2回目を大きくor小さく吹く方法です。

 

メロディが繰り返された後にたどり着くのが高音のEなので、そこに向けて徐々に大きくしていくのもいいですし、あえてその前を小さく吹くことでコントラストを効かせたいのであれば、2回目を小さく吹くのもいいですよね。

 

このように演奏者の判断に任せられる部分で何を選択して表現するかによって、その演奏の個性が際立つと考えています。

 

 

 

そして、最後のフェルマータの後は曲の終わりに向かってスパートをかけていきます。

 

音の動きが活発で華やかに終わりたい感じを受けるので、フェルマータの後は音量を抑えておいて、徐々に音量を上げていくと上手く盛り上がるはずです。

 

出鼻をくじくのは避けたいので、フェルマータの前でたっぷりブレスを取ったほうが曲の流れとしてはいいかと思います。

 

バツ印のところで吸いたくなるのですが、どうも「よっこいしょ」感が出やすいんですよね…。

 

どうしても息が続かないという方は、(V)のところで素早く足りない分の息を吸ってみてください。

 

まとめ

 

書いてある強弱記号はクレッシェンド、フォルテ、ディミヌエンドが1つずつという第1番でしたが、メロディの動きやスラーのかかり方を見ていくと、どこを目立たせるべきかが分かってきます。

 

前半ももちろん大切ですが、2回目の「a tempo」以降の後半部分をいかに華やかに演奏するかがポイントになるので、ぜひ研究してみてください!