· 

ケーラー「フルートのための35の練習曲 第2巻」第6番を読む 後編

 

第2巻の解説を最初から読みたい方はこちら

 

 

今回は第6番の後編です。

 

調性が変わる中間部分を徹底的に掘り下げていきます。

 

後半は前半と同じメロディーなので、中間部分をクリアできればゴールは目前です!

 

あとちょっと頑張っていきましょう!

 

 

ケーラーのプロフィール・第1巻の解説はこちらから

 


 

早速ですが「L'istesso tempo(リステッソ・テンポ)」って何ぞやと思いますよね。

 

音楽用語辞典によると「同じ速さで(拍子が変わっても、1拍または1小節の音符の長さは同じ)」とのこと。

 

 

 

例えば6/8拍子から2/4拍子に変わる場合、L'istesso tempoが書いてあるときは、どちらの拍子も1小節を2拍で数えます。

 

  • 6/8拍子→1拍=符点4分音符
  • 2/4拍子→1拍=4分音符

 

このように1拍に含まれる音符の長さは異なりますが、それを無視して“拍”至上主義で考えるのがL'istesso tempoです。

 

 

説明すればするほどややこしくなるのですが、今回は拍子が変わらないので深く考える必要はありません(笑)

 

そのまま元のテンポで演奏してもらえれば大丈夫です。

 

(拍子が同じなのにa tempoなどではなくL'istesso tempoが書かれている真意は謎…)

 

 

 

さて、ここからはフェルマータのお話です。

 

赤丸で囲ったところのようなフェルマータがこのあと何度も出てきます。

 

「どのくらい伸ばすのか」とか「そのあとのa tempoに上手く入れない」などの悩みを抱えている人も多いと思います。

 

 

それらをスッキリ解決するべく、まずはフェルマータについて知ってみましょう。

 

 

フェルマータとは?


 

フェルマータ(fermata)とはイタリア語で“停留所”や“停止”を意味します。

 

なので音を長く伸ばす記号というより、フェルマータが書かれているから止まった結果、音や休符が長くなったという認識を持つことが大切です。

 

 

ものによっては「基本的に書かれている音符の何倍伸ばす」などと説明されていますが、特に定まっているものはありません。

 

曲の流れやテンポ、演奏者の好みによっても長さは変わります。

 

しかし、慣れるまでは多くの人が「もうちょっと伸ばしたほうがかっこいいのに」という長さで切ってしまうことも覚えておくと役に立つはずです。

 

 

 

フェルマータについて学んだところで楽譜に戻りましょう。

 

 

ただ、理屈でアレコレここで説明しても多分1mmも伝わらないと思うので、潔く端折ります!!

 

rall.があるから4分音符と8分音符の長さは~という話が聞きたい方はぜひレッスンを受けに来てください(笑)

 

オンラインレッスンもやってます(笑)

 

 

宣伝はこれくらいにして、今回は感覚的なアプローチでフェルマータを攻略していこうと思います。

 

 

ボールを真上に投げてみよう!


 

吹きづらい部分を解消するコツは、自然の中で起こることに当てはめてみることです。

 

今回はボールや石を真上に投げてキャッチする一連の流れをイメージとして使ってみましょう。

 

 

先ほど「フェルマータ=止まる」と説明しましたが、特に今回のフェルマータは音楽の流れも止めてしまうと次に動き出すタイミングを逃してしまいます。

 

これが吹きづらさの主な原因です。

 

ボールを音楽の流れ(動)、ボールを待つ手をフェルマータの音(止)に当てはめることで感覚をつかんでいきましょう。

 

 

 

フェルマータの前後を含めた3つに当てはめるとこのような流れになります。

  1. 手を下げて
  2. 真上に投げて
  3. キャッチ 

 

ボールは高く投げると落ちてくるまでに時間がかかります。

 

そしてボールを高く上げようとすると、投げる前の動作は大きくなりますよね。

 

もし構えた位置から微動だにせず高く投げようとしたら、ものすごくぎこちない動きになるはずです。

 

フェルマータも同じように、長く伸ばしたいときは手前の音を長めにしっかり吹かないと違和感が生まれてしまいます。 

 

 

 

そしてボールを投げたあとはキャッチするタイミングをうかがいつつ、その場で待ちます。

 

ボール(=音楽の流れ)は動いているけれど待っている手は止まっていて、できることはボールの軌道を見て良いタイミングでつかむことだけ。

 

これがフェルマータの音を伸ばしている時間にあたります。

 

 

でも多くの人が投げた後にボールの滞空時間(=フェルマータの長さ)をコントロールしようとしてしまうんです。

 

それは無茶なことだというのはもう分かりますよね。

 

 

また、フェルマータの音がボールと同じような軌道を描いて戻ってくるイメージを持つとフェルマータ後の流れもスムーズになるので、ぜひ試してみてください♪

 

 

 

16分音符のフェルマータも考えれば考えるほど分からなくなるポイント。

 

フェルマータとはいえ短いので、次の「ファ」へとにかく丁寧に降りる意識を持ってみましょう。

 

 

本来、この「ド」は終着点である「ファ」に進む道中にある、重要度がそこまで高くない音です。

 

しかしフェルマータが書かれていることによって注目度が高まり、「ド」から「ファ」への流れがとても大切になっています。

 

 

そこで「フェルマータはどのくらい伸ばせばいいんだろう…?」と考えてもらちが明かないので!

 

ひとまず「ド」と「ファ」に時間をかけて丁寧に良い音で吹こうとしてみてください。

 

丁寧に吹く感覚がつかめたら「ファ」をテンポ通りの長さで吹く練習をしていくと、自然と「ド」だけ長くなってフェルマータが表現できるようになるはずです。

 

 

 

調が戻ってからは前半部分と全く同じなので前編を参考にしていただいて、曲の終わりだけ確認しておきます。

 

最後から2小節のところにもう一度p(ピアノ)が書いてあるので、消えるように終わるのではなく音量はそのままにしてほしいんだろうなと推測できますね。

 

速度を変える指示もないので、テンポも音量もキープするように心がけましょう。

 

それによって間に休符があっても最後まで緊張感を保てるようになります。

 

 

まとめ

 

 

後編も最後までお読みいただきありがとうございます!

 

このページに何回フェルマータが出てきただろう…(笑)

 

人それぞれ吹きにくいリズムやテンポがあると思いますが、意外と自然のものや身近なものからヒントが得られるはずです。

 

他の人の演奏も参考にしつつ、身の回りに目を向けてみて自分に合ったイメージをつかんでいきましょう♪