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ケーラー「フルートのための35の練習曲 第2巻」第6番を読む 前編

 

第2巻の解説を最初から読みたい方はこちら

 

 

第6番は聞いている分には軽やかで難しそうには聞こえません。

 

ですが、実際に吹いてみると「あれ?こんなはずじゃなかったのに…」となる曲だと思います。

 

要所要所で地味~に難しいテクニックが求められるので、よく楽譜を読んで確認していきましょう!

 

 

ケーラーのプロフィール・第1巻の解説はこちらから

 


 

6/8拍子でテンポはPresto。

 

AllegroやModeratoなんかだと、6/8拍子は1小節を2拍でカウントしますよね。

 

ということは、Prestoの場合は1小節を1拍でカウントできるくらいの感覚で演奏する必要があります。

 

 

速度記号を表現するには、実際の速度を変えるだけでなくカウントの取り方も変えるのがコツ。

 

基本的にテンポが遅くなればカウント取る回数は増え、速くなれば少なくなります。

 

 

 

 

冒頭のメロディーは、特別難しかったり複雑だったりするわけではありません。

 

それにもかかわらず

  • なんかしっくりこない
  • 音が滑るような感じがする

など、吹きづらさを感じる人は少なくないはず。

 

ここからはその原因を一つずつ見ていって解決の糸口を探していきましょう!

 

 

原因その1:アウフタクト


 

この曲の始まりは、最初の1拍目の前に音符があるアウフタクトがあります。

 

アウフタクトは1拍目に向かうための音、すなわちアウフタクトよりも次の1拍目のほうが重要度が高いんで・す・が!

 

その重要な音符が2オクターブ目のド#(Cis)だということが問題なんです。

 

 

ド#(Cis)の指使い
ド#(Cis)の指使い

 

2オクターブ目のド#(Cis)というのは、トリルキイを除いて全てのキイを開ける指使いになっています。

(運指の詳しい解説はこちら)

 

そのためキイからどんどん空気が抜けていくので、音が安定しにくく音程も上ずりやすくなります。

 

このコントロールしにくい「ド#」が最も重要な拍にあるということが、1つ目の原因です。

 

 

【解決策】

  1. ド#(Cis)が安定するようにロングトーンで練習
  2. 替え指を使う(参考URL:https://www.wfg.woodwind.org/flute/fl_alt_1.html)

 

原因その2:運指が難しい


 

音域的には特別難しい運指ではないのですが、その組み合わせがちょっと厄介。

 

先ほども出てきた1拍目のド#(Cis)はキイをほとんど押さえませんが、次のレ(D)は逆にほとんどのキイを押さえることになります。

 

しかもその次のシ♭(B)は押さえるキイが少ないため、今度は指をキイから離す必要があります。

 

 

これらの「一度に複数の指を上げるor下げる音」は、指の動きがそろわないと良い音が鳴りません。

 

ましてや3音連続となるとちょっとのズレが積み重なって、音と音の間に雑音が入ったり音のはまりが悪く感じたりするようになります。

 

これが2つ目の原因です。

 

 

【解決策】ニ短調(d-moll)の音階やエクササイズを練習する

 

原因その3:タンギング


 

タンギングは1拍ずつするだけだから難しくないんじゃ…?と思うじゃないですか。

 

でもこの速さの6/8拍子だと、想像以上に難しいと感じる人が多いんです。(私調べですが笑)

 

これにもいくつか理由がありますが、たいていは基礎練習が足りていません。

 

 

というのも初心者向けのエクササイズやエチュードは、ほとんどが4/4拍子や3/4拍子のものです。

 

ケーラーのエチュードの第1巻には6/8拍子の曲が入っていますが、どちらもスラーは1小節ごとでテンポも速くありません。

 

そのため、今回の曲のようなタンギングに慣れていない人がほとんどだということです。

 

これが3つ目の原因にあげられます。

 

 

【解決策】6/8拍子のエクササイズやエチュードを1拍ごとのスラーで練習する

 

 

 

さて、ようやく先に進みますが次に出てくる形も難しいんですよね~(涙)

 

赤とオレンジで囲った部分は、同じ形が音を変えて繰り返されるシークエンス(独:ゼクエンツ)というものです。

 

1小節ごとのシークエンスならまだいいのですが、このテンポで1拍ごとに音が変わるのは本ッッッ当に大変ですよね(笑)

 

 

これはとにかく回数をこなすことが大切です。

 

ただし、同じ間違いを繰り返すと癖がついてしまうので、最初はとにかくゆっくり始めて徐々に速度を上げていきましょう。

 

また、「私はできる」と自分に言い聞かせることも重要なコツです。

 

何事も「失敗するんだよな~」とか「失敗したくない」って思って臨むと99%失敗しますよね。

 

一番は何も考えず“無”で吹くのがいいのですが簡単じゃないので、せめてポジティブなことを考えながら吹いてみましょう!

 

 

 

次のメロディーはオクターブを変えて繰り返されるので、男声・女声のように声部が変わったような表現ができるといいですね。

 

例えば低い音域のときは密度の高いバリバリとした音を出して、高い音域は澄んだ音にするなど音色の変化をつけるといいかもしれません。

 

 

ラ(A)が連続する分散和音は、高い「ラ」の音程がずり下がってくるので気をつけましょう。

 

また、重要度でいうとスラーの頭の低い「ラ」のほうが上なので、大きく吹かないようにすることも忘れずに!

 

 

まとめ

 

前編はこの辺りでおしまいにして、後編に分けたいと思います。

 

このあと同じメロディーが繰り返されるので、次回はL'istesso tempoからフェルマータの演奏方法を中心に進めていきます。

 

テクニックは難しいものが多いですが、その分繰り返しも多いので地道に練習してマスターしていきましょう!

 

 

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コメント: 2
  • #1

    flute (木曜日, 25 5月 2023 12:16)

    今年の11月に大学受験でケーラー2巻の12番を吹くので解説かいて欲しいです��‍♀️お願いします��‍♀️�

  • #2

    佐藤美晴 (水曜日, 31 5月 2023 10:15)

    コメントありがとうございます。
    長い文章を書くことに向き合う時間が取れず、なかなか更新ができなくて申し訳ないです…
    受験を控えていらっしゃるのであれば、何よりも師事している先生、あるいはこれから師事したい先生のアドバイスを吸収して自分のものにすることを優先してくださいね!
    応援しています!!