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ケーラー「フルートのための35の練習曲 第2巻」第5番を読む 後編

 

第2巻の解説を最初から読みたい方はこちら

 

 

前編 ではテンポの組み立て方を中心に見ていきました。

 

今回は細部まで読み込んで、全体を具体的にどう演奏していくかを考えていきましょう!

 

 

ケーラーのプロフィール・第1巻の解説はこちらから

 



この5番のように、細かい音符が並んでいる曲は「細かく見て、大きく演奏する」のがコツ。

 

まずは拍単位で楽譜を見てみましょう。

 

 

最初の小節は「ファ#」が何度も繰り返されるので、それ以外の動いている部分がメロディーのようにみえますよね。

 

そして2小節目が分散和音。

 

ですがメロディーラインを強調して吹こうと思うと、なんだかいびつといいますか、せわしなく聞こえるかと思います。

 

それは1小節目も分散和音だからなんです。

 

 

 

このように書いてみると、分散和音であることがよく分かりますね。

 

もし先ほど赤丸で示したメロディーラインを強調したいのであれば、表拍にメロディーラインがくるように書くはずです。

 

そうではなく、裏拍にメロディーラインを持ってきているということは、より分散和音としての性格を前面に出したかったのでしょう。

 

ですので、メロディーの流れは表現しますが、一つひとつの音を強調する必要はないということになります。

 

 

さて、ここまで拍単位で見てきましたので、次に小節単位で大きく見てみましょう。

 

 

 

一番シンプルに考えると、このように1小節あたりに1つの和音が当てはまります。

 

いろいろな高さの音が並んでいますが、「同じ響きの枠組みの中で動いている」という感覚を持つことで演奏に統一感と方向性がうまれます。

 

 

今回の和音は、幼稚園などで「気を付け・礼」のときに先生が弾く和音と同じものです。

(この説明でピンとくるでしょうか…(^^;))

 

和音の種類は詳しく分からなくても、書いてある音を一つひとつ弾いていけば、なんとなく和音が弾けて響きが分かるようになります。

 

最近ではピアノを弾けるアプリもたくさん出ているので、ピアノ経験がない方も試しにやってみると面白いですよ♪

 

 

次のパートはシンプルに音階で下がっていくので、そこまで難しくありません。

 

ここのポイントは臨時記号のシャープです。

 

このシャープが加えられていることで、長調から短調へ変わっていく場面になります。

 

その音を強くする必要はありませんが、ちゃんと意識しておくだけで聞いている人に対しても、そして自分に対しても説得力のある演奏になるはずです。

 

 

前半のクライマックスの部分は、赤丸で囲った拍頭の音以外はずっと同じ音の組み合わせです。

 

ここはメロディーラインをしっかり目立たせるようにしましょう。

 

低音域は鳴らそうと思えば思うほど、息が下を向きすぎて音が鳴らなくなってしまうので、楽器の外に息を出すことを意識してみてください!

 

 

 

Vivoに入る前は前回取り上げたので割愛しまして、3/8拍子を見ていきましょう。

 

3/4拍子と3/8拍子の大きな違いはテンポ感。

 

基本的に3/8拍子のほうがテンポが速く、1小節を1拍で数えることが多いです。

 

 

1小節を1拍で数える場合は、どこまでがワンフレーズなのかが見えにくいので楽譜をよく見て判断するようにしましょう。

 

今回は4小節ずつ、もしくは8小節ずつ区切っていけば大丈夫ですが、時々3小節や5小節で区切られるものもあるので注意が必要です。

 

 

 

前半の分散和音に隠れたメロディーとは違って、重要な音が見極めにくくなっています。

 

全てがメロディーといえばそれまでなのですが、自分の中で句読点を打っておかないと演奏中迷子になってしまいかねません。

 

 

例えば最初の小節を上げてみるだけでも、いろいろな分け方ができます。

 

どれが正解というのは基本的にはなく、分け方は演奏者の数だけあるといっても過言ではないでしょう。

 

特に吹きにくいと感じる小節がある場合に、音符の分け方を変えるだけですんなり吹けるようになることもあるので試してみてくださいね。

 

 

3/8拍子の終盤には「allargando=だんだん強くしながら、だんだん遅く」がありますが、そのあとに「rall.=だんだんゆるやかに」があるので要注意!

 

allargandoで遅くし過ぎると、Tempo Ⅰの手前ではこれ以上遅くできないという状況になってしまいます。

 

演奏中に「遅くし過ぎた!」と思ったら、音が上から下へ進むときに一度スピードアップする方法もあります。

 

ですが、まずは計画的にテンポをコントロールできるよう練習していきましょう!

 

 

最後のPiu Prestoは、再び分散和音がたくさん出てきます。

 

速いテンポのときに間違えないようにと、一つひとつの音を追いかけながら演奏したくなる気持ちはよく分かるのですが、こういう場所こそ広い視野をもって演奏しましょう。

 

 

例えば3小節目からは1拍ごとに和音が変わっていきます。

 

一つひとつの音を見ていると和音の変化に対応しきれなくなり、またヒューマンエラーも起きやすくなります。

 

1拍ごとに上がっていく和音の中を泳いでいくようなイメージで、ある意味ざっくりととらえるのがコツです。

 

 

一つひとつの音を追いかけずに演奏するのは半音階のほうがやりやすいと思うので、まずはそちらから練習してみてはいかがでしょうか?

 

 

まとめ

 

第5番はいろいろな要素が含まれていたので、今までにない前編後編のコラムになりました。

 

後編を読んでみると前編の内容も入ってきやすいと思うので、ぜひ読み返して活用していただければと思います♪