前回の第4番と打って変わって、長~いスラーが続く第5番。
なめらかに演奏することだけに注力しても、思うようにコントロールできずに悩む人も多い曲です。
テンポの変化にも対応できるように、丁寧に楽譜を読んでいきましょう!
4分の4拍子、調号はシャープが2つで、短調らしい臨時記号などがないので二長調(D-dur)だと判断できます。
テンポはModeratoなので穏やかな速さでよさそうですが、この曲は拍子と速度が変わるので要注意!
まずは一番早いテンポを確認してから組み立てていきましょう。
第5番で一番テンポが速いのは、最後にテンポが変わる「Piu presto=前よりも極めて速く」。
ここのテンポを決めずに演奏すると、速度を上げる余力がない状態になりかねません。
Prestoとの差がつけられるようにModeratoのテンポを決めましょう!
次に3/8拍子のVivoのテンポを考えていきます。
4/4拍子と3/8拍子のテンポをそれぞれ決めてもいいのですが、拍子が変わる瞬間に混乱しやすくなります。
ですので、4/4拍子の8分音符と3/8拍子の8分音符が同じ速さになるようにしてみましょう。
例えばModeratoの4/4拍子を♩=88で演奏するとしたら、8分音符は倍速になるので♪=176。
それをそのまま持ってきて3/8拍子を♪=176で演奏すれば、それぞれの拍子の速さを関連付けることができます。
4/4拍子は基本的に1小節を4拍(=4分音符が4つ)で数えますが、拍子が変わる直前だけ8分音符で数えれば3/8拍子に入っても混乱せずに済みます。
Vivoは「生き生きと、活発に、速く」という意味なので遅く感じるかもしれません。
ですが、慣れるまでは全く同じテンポで拍子が変わる部分を練習して感覚をつかんでいきましょう。
さて、 テンポの話が終わったところで楽譜を読んでいきます。
冒頭の「ben legato e con espressione」は「十分になめらかに、そして感情を十分に表現して」という意味です。
まずは“なめらかに”演奏することについて考えてみましょう。
なめらかに聞こえる演奏の条件はいくつかありますが、欠かせないのはこの2つです。
- 一つひとつの音が連なっている
- 音と音の間に余計な雑音がない
この曲はだいたい1小節に1つの大きなスラーがかかっているので、音がぶつぶつと切れる心配はありません。
それでもなめらかに演奏するのが難しいのは、音と音の間に雑音が入りやすいメロディーだからなんです。
①はフルートにとって鬼門ともいえる跳躍。
3オクターブ目のファ#(Fis)は出しにくいので、違う音が鳴ったり隙間が空いたりしてしまいます。
また②は動かす指が多いため、余計な音が入りやすいですよね。
こういった一瞬で過ぎるけれどなめらかさが失われるポイントを見つけられるかが重要になってきます。
演奏しながら注意して聴くのはもちろん、スマホなどで録音して聴いてみるのも練習の質を高められるのでおすすめです。
次に“感情を十分に表現”するにはどうしたらいいか。
これは人によってアプローチの仕方が変わるので、文章で説明するのは難しいところ。
ですが、一つ言えるのは「やりすぎは禁物」だということです。
表情豊かに、感情を表現してと言われると、何かしなくちゃ!って思いますよね。
強弱をつけてみたりテンポを揺らしてみたり、いろいろ加えていったものの、結局まとまりがなくなって迷子になることがありませんか?
何事もいい塩梅というものが存在します。
ときにはその枠からはみ出ることで面白味が生まれることもありますが、まずはシンプルに少しずつ表現を加えていくようにしましょう。
まずは長調と短調を把握して、その変化を表現するために強弱や音色を変えてみます。
それでも物足りない場合はテンポの変化を加えることで、やりすぎを防ぐように心がけてみてください♪
この束の間の16分音符なしゾーンは要注意ポイントです!
- 音符が急に長くなって数え間違える
- ついつい一息ついてしまって緊張感がなくなる
- 表情豊かにしようと思って最初からテンポを遅くしちゃう
などなど、トラップに引っかかりやすいので気を付けましょう。
一見シンプルで簡単そうに見える部分こそ、メトロノームに合わせて練習しておいたほうが安心です。
まとめ
前編は主に曲全体をどう表現するかというお話になりました。
次回はテンポの速いパートをどのように演奏したらいいかなどを解説していきます!
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