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ケーラー「フルートのための35の練習曲 第2巻」10番を読む

 

第2巻の解説を最初から読みたい方はこちら】 

 

 今回は他の曲とはちょっと違う第10番です。

 

音符が細かくてリズムも難しいのでイーッとなる人も多いかもしれませんが(笑)

 

冷静に確実に読み解いていきましょう♪

 

ケーラーのプロフィール・第1巻の解説はこちらから

 


 

調性は、調号がついてないことと「ミ→ラ」からはじまること、2小節目のソにシャープがついていることからイ短調(a-moll)だと分かります。

 

テンポはAdagio(アダージョ)なのでアンダンテよりもゆっくり。

 

隣に書いてある「patetico」はイタリア語で「悲愴に、感傷的に」という意味です。

 

そして下には「con molta espressione=非常に感情を豊かに表現して」という意味の言葉が書かれています。

(※moltaは「molto=非常に」が名詞に合わせて変化したものです)

 

6/8拍子は1小節を2拍で数える場合もありますが、今回は音符が細かいので最初は6拍で数えながら練習していきましょう!

 

 

 

最初の2小節は装飾音符がなければ、比較的シンプルなメロディーです。

 

問題は3小節目以降。

 

(正直楽譜の書き方がより読みにくくさせていますが)リズムが複雑で、ぱっと見ではどんなリズムなのか分かりません。

 

そんなときは線を入れたり数字を書いたりして、どこの拍にどの音符がいるのかを整理しましょう。

 

全部書くと下の画像のようになります。

 

 

 

音符がたくさんある楽譜は、むしろ4分音符などの長い音符がうまく数えられないことでミスが起こります。

 

だからこそ、できるだけ細かくカウントを取ることがとても大切です。

 

 

3小節目の6拍目を見て分かるように、1つの拍に32分音符(横線3本)は4つ入ります。

 

ということは、3小節目最初の「ラ」は2拍なので32分音符8つ分の長さ、4小節目最初の「ラ」は1拍半なので32分音符6つ分の長さということ。

 

このように細かくカウントすると、1拍が長くなったり短くなったりする確率がグッと下がるので、根気よく取り組んでいきましょう。

 

必要であればもっと線を書き加えたり、空いているスペースに音符を書いたりして自分が読みやすい楽譜を作るのもおすすめです!

 

 

 

次に装飾音符です。

 

上の画像は装飾記号や装飾音符を、全て通常の音符に書き起こした一つの例だと思ってください。

 

この楽譜を基本に装飾音を速くしたり遅くしたりすることで、その人の演奏に個性が出ます。

 

でも遅いテンポの曲は緩急をつけやすい分、やりすぎて何拍子の曲なのか分からなくなることも…

 

試行錯誤を繰り返して、いい塩梅を見つけてくださいね♪

 

 

 

2段目はフェルマータが気になりますね。

 

ラレンタンド(rall.)でテンポがさらに遅くなりますが、まだ曲の前半なのでそこまで伸ばす必要はありません。

 

音符も32分音符なので、一瞬止まるくらいの意識で十分です。

 

 

 

3段目は調性がハ長調(C-dur)に変わります。

 

音量が大きくなり「piena voce=豊かな声で」という指示もあるので、たっぷりと歌い上げましょう。

 

音域が低くなると音が鳴りにくなりやすいので、ロングトーンで音を良く整えてから練習するのがおすすめです。

 

音が鳴りにくかったり途中で消えてしまう場合は息の向きを上に、音が細くて弱い場合は顔を上げて息の向きを少し下にすると豊かな音が出やすくなります。

 

 

 

4段目の頭の「レ#」は8分音符の「ミ」につながる重要な音です。

 

ストレスがかかったほうが活きる音なので、しっかり鳴らすようにしましょう。

 

 

そのあとはイ短調(a-moll)に戻ります。

 

クレッシェンドをかけるところは音符が少なくなる分テンポが速くなりがちなので気をつけましょう。

 

 

4小節目はこれまでの解説で何度も出てきた「スラーがかかっている頭の音が一番強い」というスラーの性質を使うと自然と上手く吹けます。

 

 

まとめ

 

ちょっと中途半端なところですが、ここで前編を終えたいと思います。

 

1段ずつポイントとなる部分を解説したものの、この曲はやれることが多すぎて本当にごく一部しか紹介できていません!(笑)

 

でも楽譜の読み方だったりリズムの取り方を知ると、この曲の“聴き方”が分かるようになるはずです。

 

もし以前にYouTubeなどで参考演奏を聴いたことがある人は、ぜひこのコラムを読んだ後にもう一度聴いてみてください。

 

きっとその演奏者がどんなふうに第10番を表現しようとしているのかが、よりはっきりと伝わってくると思います。