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ケーラー「フルートのための35の練習曲 第2巻」第9番を読む 前編

 

第2巻の解説を最初から読みたい方はこちら】 

 

前回の8番とはうってかわって 、テクニカルな9番は難しく感じる人も多いかと思います。

 

音符の数が多い曲こそ冷静に楽譜を読んで、確実にクリアしていきましょう!

 

 

ケーラーのプロフィール・第1巻の解説はこちらから

 


 

拍子は4/4拍子で、調号は何も書かれていません。

 

「ド・ソ・ミ」と始まるので、ハ長調(C-dur)の曲だと分かりますね。

 

 

テンポは「Allegro moderato」なのでAllegroよりは少し遅め。

 

とはいえ最初から速いテンポで吹いてしまうといろいろ見落としてしまいやすいので、まずは落ち着いて吹けるテンポで練習してみましょう。

 

 

 

この曲はスラーやスタッカートをはじめとする“アーティキュレーション”が肝になってきます。

 

よほど今までにアーティキュレーションを練習して極めてきました!という方でなければ、最初は全てスラー、もしくはタンギングで練習するのがおすすめです。

 

 

最初から楽譜に書いてあるアーティキュレーションをつけようと頑張ると、そっちに気を取られてメロディーに意識を向けるのが難しくなります。

 

言い換えれば、初めましての人にフルメイクをするときに、すっぴんや服装などをよく見ないままメイクするようなもの。

 

これだと上手くいく確率はぐっと下がってしまいますよね。

 

 

まずは素材である音符がどう並んでメロディーを作っているのか、アーティキュレーションを取った状態でじっくり確認しましょう。

 

音階・分散和音・半音、あとは何度か解説で出てきたシークエンスを探しながら吹いてみるといろいろ見えてくるはずです。

 

 

 

何となく曲の全体像が見えてきたら、テンポはそのままでアーティキュレーションをつけてみます。

 

今回はスラーの終わりにスタッカートはついていないので、他の音につられて短くなりすぎないように気をつけてください。

 

特に低い音から高い音へのスラーは要注意です!

 

 

 

最初の難関が1オクターブを超える跳躍とスラーのかけ合わせです。

 

ここはいくつか段階を踏みながら乗り越えていきましょう。

 

 

 

①一つひとつの音を良い音で鳴らす

 

まずやるべきは、それぞれ良い音が鳴るポイントを確認しておくことです。

 

これだけ高さが違うと良い音が鳴る角度や息のスピードは大きく変わります。

 

とりあえず鳴ればいいやと目星をつけずに練習していくと、いつか迷子になって特に下の音が鳴らなくなるはずです。

 

必ず良い音が鳴るポイントを通っているかチェックしながら練習するようにしましょう。

 

 

②指をはっきり動かす

 

スラーは間に余計な音が入りやすいので、指の動きを整えることも重要です。

 

今回は左手の中指と薬指、そして右手の人差し指を一緒に動かすのでパラパラと他の音が鳴りやすいですよね。

 

吹きながらだとやりにくいと思うので、まずは目視で確認しながら指を動かしてみましょう。

 

キイはばねの力で勝手に開くので、それを邪魔しないように指を動かすのがコツです。

 

 

 

終わったかと思ったらまた1オクターブの跳躍がこっそり出てきましたね(笑)

 

人によっては下がるほうが難しく感じるかもしれませんが、同じようにそれぞれが良い音で鳴るポイントを通ることが大切です。

 

無理やり下げようとして喉が鳴ってしまうこともあるので、首やデコルテあたりの力を抜くのも忘れないようにしましょう。

 

 

そしてそのあとは前回も出てきたシンコペーションの連続!

 

今どこの拍にいるのか分からなくなるので、1拍目と3拍目だけはしっかり把握しながら進んでいきましょう。

 

 

 

あーまた跳躍…と思ったそこのあなた!朗報です!

 

ここは曲の流れから1拍目の「シ」を吹いた後にブレスを取っても違和感がありません。

 

というかむしろその前に息を吸うほうが流れが悪いので、スラーがかかっていますが気にせずブレスを取りましょう♪

 

 

 

後半の2小節は、同じメロディーが音の高さを変えて繰り返されるシークエンス(独:ゼクエンツ)です。

 

そして各拍の頭を見てみると「レ・ファ#・シ」の分散和音でもあることが分かります。

 

それにもかかわらず複雑なメロディーになっているのは、縫うような動きになる刺繍音が入っているからなんです。

 

 

 

赤線で囲った部分は、最初の音から半音下がってまた同じ音に戻っています。

 

半音下がって上がる縫うような動きになるので、間に入る音を刺繍音と呼びます。

 

ここまで細かく読むのは大変ですが、仕組みが分かると演奏しやすくなるタイプの方はぜひ活用していただければと思います。

 

 

 

そのあとは分散和音→音階→分散和音の流れでニ長調(D-dur)に転調していきます。

 

しっかりクレッシェンドをいかしてピアノとの差を出していきましょう。

 

まとめ

 

1ページに収まる短い曲なのですが、必要なテクニックが山盛りなので前編後編で分けたいと思います。

 

次回は転調してから最後までを読んでいきます!