何か特定の技術を高めるためというよりは、曲全体をどう仕上げるかが求められる第8番。
ある意味で練習曲っぽくないからかコンクールの課題曲にもよく選ばれている印象があります。
気をつけないと最後までたどり着くので精一杯になりやすいので、広い視野を持ちつつ細部まで読み込んでいきましょう!
拍子は3/4拍子で、調号はフラットがひとつ。
最初が「ラ・レ・(ミ)・ファ」と始まることと、「ド#」がちらほら見受けられることからニ短調(d-moll)だと推測できます。
ワルツの速さでという意味の「Tempo di Valse」に「moderato=中くらいの速さで」がくっついているので速く吹く必要はありません。
さまざまなテンポのワルツがありますが、例えばシュトラウス2世の「美しく青きドナウ」なんかを基準にすると考えやすいと思います。
そして「con eleganza=優美に、優雅に」という指示も書かれています。
にもかかわらず、高音の「ラ」を鳴らそうと思い切り吹き上げていませんか…?
ドキッとした方は要注意です!!
フルートの高音域はきらびやかに響く反面、金切り声のような音にもなりやすいことを忘れてはいけません。
おそらく第2巻の後半まで進んでいる方は、幅広い音域をある程度問題なく鳴らせるようになっているはず。
なので次は高音域が「大きな音」ではなく「うるさい音」になっていないかをチェックしながら演奏してみてください。
喉や口の中が狭くなりすぎていないか、お腹や背中ではなく胸や喉で息のスピードを上げていないかなどがポイントになります。
普段使わない筋肉を使うので大変ですが、クレッシェンドは免罪符になってくれないので頑張りましょう(笑)
次のスラーはおさらいポイントです。
前回も出てきましたがスラーは「スラーがかかっている頭の音が一番強い」。
そして今回は裏拍にスラーの頭がきています。
ということはこのリズムは……シンコペーション!
分かった方は素晴らしい!ピンとこなかった方はこれを機に覚えておきましょう♪
(シンコペーションの詳しい説明は第1巻の第15番へ)
そのあと同じメロディーを繰り返して一区切りとなり、新しいメロディーがフォルテで出てきます。
ここは時間をかけてもしっかりと息を吸って豊かな音で始められるようにしましょう。
フォルテをきちんと表現することで、次のピアノとのコントラストがはっきりします。
ここはシンコペーションとノーマルのリズムが交互に出てくる部分です。
スラー頭の音を見てみると半音ずつ下がっているのが分かりますね。
スラーを丁寧に表現すればリズムも半音階の流れも自然と際立ってくるので、遅いテンポで練習してみましょう。
転調手前の小節は焦らず計画的に演奏することが大切です。
まず「allargando」が書いてあるので、だんだん遅くしながらクレッシェンドをする必要があります。
フェルマータで息が足りなくなる場合は、スタッカートでできる隙間で短く息を吸ってみましょう。
犬が暑いときに舌を出して「ハッハッ」と息を吸うように、息を吐いた反動で吸うのがコツです。
また、最後の「レ」は次のハ長調(C-dur)へ向かう音なので、明るい音色で音程が下がらないように気をつけましょう!
調が変わると同時にメロディーのパターンも変わりました。
前半は全てがメロディーラインでしたが、転調後は拍頭の音がメロディーラインで他は伴奏という形になっています。
(伴奏はシンコペーションの形ですが、同じように表現するとうるさく聞こえるのであまり気にしなくて大丈夫です)
フルートはこのパターンのメロディーがよく出てくるのですが、吹きこなすのは至難の業。
メロディーラインが浮き出てこなかったり、逆にメロディーラインを強く吹きすぎたりとバランスを取るのが難しいと思います。
まずはメロディーを大きく吹いたり伴奏を小さく吹いたりしながら音量を調節していきましょう。
そのあとにメロディーの流れも表現できるようになれば100点満点です。
かなり根気のいる練習になると思うので、気長に少しずつ進めてみてください。
臨時記号が増えるとより難しくなりますが、この曲で一番緊張感や高揚感がある場所なのでつっかえないようによく練習しましょう!
激ムズだけど失敗したくないポイントはそこだけ暗譜するつもりで練習するくらいがちょうどいいです(笑)
a tempoの部分は、転調直後に出てきたハ長調(C-dur)のメロディーがト長調(G-dur)になっています。
音域も下がることから落ち着いた雰囲気になるので、「dolce=甘く」を表現できるように音色を変えられるといいですね。
resolutoは「きっぱりと」という意味なので、アクセントをいかした音でしっかり上っていきましょう。
ここはシンコペーションをしっかり表現しても面白いかもしれません。
ここの分散和音も難しく感じるかもしれませんが、高さは違えど出てくる音は「ソ#・シ・レ・ファ」の4つです。
運指がややこしくて一つひとつの音を追いたくなりますが、6小節間同じ和音の中にいるという感覚をぜひつかんでほしいなと思います。
「ソ#ファレシソ#ファソ#シレ…」と頭の中で言うのに一生懸命にならずに、「和音~半音階~音階上って下りて」という大きなくくりで考えるのがコツです。
最初はこんがらがると思いますが、頭の片隅にこの意識を置いておくと徐々に音楽の流れに乗りやすくなって楽に吹けるようになります。
フェルマータの後は調がニ短調(d-moll)に戻り、冒頭と同じメロディーが出てきます。
これまでずっと3連符を吹いていたので、拍子やテンポ感がつかみにくいですよね。
楽器を吹きながらだとなかなか上手くいかないと思うので、まずは手を叩きながら歌ってみましょう。
手で3拍子を取りながらrit~TempoⅠまで歌えるようにします。
次に足で床を叩いて3拍子を取りながら同じように歌い、できるようになったらフルートでメロディーを吹きましょう。
足を使うのは難しいという場合は、TempoⅠに入ったら頭の中で思い切り「1・2!」と言うのもおすすめです。
何となくしっくりこなくても3小節目まで進んだらどうにかなると思うので、とりあえず無理やり進んじゃうのもアリかもしれません(笑)
ここのPiu lentoは遅くしすぎるとrall.(ラレンタンド)でさらに遅くできなくなるので気をつけましょう。
Piu vivoも欲張りすぎると指がもつれて最後までたどり着けなくなるので安全運転がおすすめです。
ただ「con fuoco=熱烈に」という指示があるので、バリバリっとしたフォルテ向きの音色にできると雰囲気が出ると思います。
最後の段も暗譜する勢いで練習しておきたいところですね。
左手の薬指と小指を駆使するので、腕を痛めないように気をつけながらよく練習しておきましょう。
メロディーのパターンとしてはハ長調の部分と同じです。
最悪指が回らなくても赤丸のメロディーラインだけは何が何でも吹く!くらいの意気込みでいきましょう(笑)
最後の16分音符はテンポを遅くせず鋭く演奏する人もいれば、わざと長く吹いて壮大な雰囲気にする人もいると思います。
この辺りはもう好みなので、いろいろ試してしっくりくる吹き方を探してみてください。
まとめ
ちょっと(かなり?)長くなってしまいましたが最後まで読んでくださりありがとうございます…!
曲が長くなればなるほど“構成力”が必要になってきます。
この第8番はその練習にもってこいだと思うので、ちょっと他の曲よりも時間をかけて取り組んでみてはいかがでしょうか。
また他の曲を経てから戻ってくるのもおすすめです。
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