· 

ケーラー「フルートのための35の練習曲 第1巻」第14番を読む

 

第1巻の1番から読みたい方はこちら

 

前回の第13番とは打って変わって、 テクニカルな練習曲になっている第14番。

 

音の移り変わりや和音の変化、アーティキュレーションで表現する方法を学ぶことができます。

 

メロディーを表現するのとはまた違った面白さがあるので、一緒に見ていきましょう!

 


 

調号はシャープが3つ。

 

冒頭2拍の分散和音から、イ長調(A-dur)だとわかりますね。

 

テンポはAllegroですが、幅の広い跳躍も多くあるので最初はゆったりしたテンポで丁寧に練習していきましょう。

 

 

大きなスラーの中にアクセントが書かれている音符があります。

 

第12番では、スラーがメロディーラインを見分ける鍵となっていましたが、今回はアクセントがその役割を担っている…

 

のですが!

 

アクセントは全て低音につけられていますよね?

 

しかも、これをメロディーだとは言い難いので、今回はベースラインを強調するために書かれていると考えることができます。

 

 

 

この曲は歌のようなメロディーではなく、(分散)和音の移り変わりを描いています。

 

絵画で言えば、特定の人物を描く肖像画ではなく、風景画といったところでしょうか。

 

そのため、広い視野を持って全体のバランスを整えていくことが大切です。

 

 

まずは、音楽の流れがどこへ向かってどこへ収まるのかを明確にしていきましょう。

 

最初の段の場合は、冒頭3小節間はずっと「ラ・ド#・ミ」の和音を中心に構成されていますよね。

 

特にクラシック音楽には、「3回同じ(もしくは似た)ことが繰り返され、4回目で変化する」というあるあるがあります。

 

第7番の冒頭も似たような形ですね。

 

 

ただ同じことを繰り返しては退屈ですので、1回目より2回目、2回目より3回目と緊張感を高めることがポイント。

 

徐々に音量を上げて4小節目に入り、その後ディミヌエンドをして落ち着かせる流れになります。

 

 

ここでは2小節毎に和音が変化していきます。

 

さらに長調から長調ではなく短調へ変わるため、3小節目の「ファ#」をほんの少し長めに演奏してみてください。

 

そうすると人間の耳は注意して聞くようになるので、和音の変化を感じ取ってもらいやすくなります。

 

 

さまざまな和音に変化しながら、イ長調(A-dur)とは縁遠いハ長調(C-dur)へと転調します。

 

いきなりシャープが3つもなくなっているので、意外な調に変わったことが見て取れますよね。

 

 

音の響きとしても意外性があるので、さらっと何となく進んでしまうと違和感を覚えるかと思います。

 

そこで大切なのが「allargando」「p」「dolce」の3つをどう使うかです。

 

 

転調する1小節前にある「allargando」は「だんだん遅くしながら、だんだん大きく」という意味。

 

まず「だんだん大きく」することは、転調後の「p(ピアノ)」かつ「dolce=柔らかに、甘く」という変化をより際立たせるために使います。

 

今回はディミヌエンドをすることなく、いきなり音量を小さくしたほうが効果的でしょう。

 

 

そして「だんだん遅く」することは、しっかりテンポを落とすことで、演奏する人も聴いている人も意外な変化をする心の準備をするために使います。

 

また、ハ長調の部分は音符が細かいので、転調後に少しテンポを落ちていても不自然じゃなくなります…(笑)

 

 

場面によっては唐突に変化させることが効果的なこともありますが、聴いている人を置いてけぼりにしないことが重要です。

 

人前では演奏しない方でも、よりいい音楽のために気をつけてみてくださいね♪

 

 

 

そして転調後…。

 

ただでさえテンポが速い曲なのに32分音符が!!

 

と焦るのは禁物です。

 

 

こういった短くて細かい音符は、装飾音符のように考えることがコツ。

  • 勢いのいい息をスラーの終わりまで流す
  • 指を軽く速く動かすイメージを強くする

この2つが本当に大切です。

 

 

小さいこと、細かいことは気にしすぎず、次の拍でちゃんと8分音符が吹ければいいやくらいの心持ちでOK!

 

0.5倍速くらいから練習したくなる気持ちはわかりますが、実際に近いテンポで感覚を掴んでしまうほうが手っ取り早いかなと思います。

 

 

その後再びA-durに戻るのですが、ここは直前の小節ですでにA-durに変化しているので、今まで通り自然にテンポを緩めるくらいで大丈夫です。

 

C-durはどうしてもテンポが遅くなってしまうので、「a tempo=前のテンポで」となっていますが、「Tempo Ⅰ=始めのテンポで」のつもりでいましょう。

 

 

曲のエンディングは短くまとめられています。

 

最後の音は8分音符ですが、短すぎては「ん?終わったの?」といったなんとも気まずい感じになります(笑)

 

 

それを避けるためには、以下の2点を気をつけましょう。

  • 響き(余韻)まで演奏するつもりで気持ち長めに吹く
  • 息をしっかり入れて、タンギングもはっきりする

 

音量が大きく、高い音で終わるので息が足りなくなりやすいはず。

 

もし4小節一息では無理そうであれば、1オクターブ目の「ラ」を吹く前に短くブレスを取るようにしておきましょう!

 

まとめ

 

前回に比べてかなり短いコラムになりましたね(笑)

 

というのも、音階・分散和音練習の応用編みたいなものなので、あれこれ言うことは少なくすみました。

 

言い換えれば、この曲を難しいと感じた人は分散和音の練習が足りていないかも…?

 

タファネル・ゴーベールやライヒャルトなどは1つの調に15~30秒しかかかりません。

 

日々の練習に取り入れるだけで、1カ月後にはぐっとレベルアップできますよ♪