· 

ケーラー「フルートのための35の練習曲 第1巻」第10番を読む

 

第1巻の1番から読みたい方はこちら

 

第10番は音階や分散和音、スラーの練習にピッタリの曲です。

 

その反面、機械的に聞こえやすいので、より音楽的に演奏するように心がけていきましょう!

 


 

調号はシャープが2つ。

 

1小節目のスラーがかかっている頭の音をつなげると、D-dur(ニ長調)の音階になりますね。

 

拍子は4分の4拍子で、テンポは「Moderato=中くらいの速さ」。 

 

個人的にModeratoが一番曖昧なテンポ指示だなぁと思うのですが、皆さんはいかがですか?(笑)

 

 

「Andante=歩くようなテンポ」よりも速いのがModeratoなので、歩く速度では遅すぎるのでしょう。

 

「risoluto=きっぱりと、決然と」という指示が表現できる程度の速さが望ましいので、だいたい♩=88といったところでしょうか。

 

 

この曲は2小節で1区切り、4小節で1つのメロディーという構成になっています。

 

特に前半は2小節ごとに8分休符がありますが、2小節目はあくまでもメロディーの途中ですので、4小節目までつながっているという意識を持つことが大切です。

  • テンポをキープして長く休まないようにする
  • 最後の8分音符を落ち着かせすぎない

この2点を気をつければ、まとまりのある演奏に近づけますよ!

 

 

 

そして、この曲最大のポイントである2つの音符にかかっているスラー。

 

一見なんてことないスラーですが、この連続する短いスラーを演奏するには意外とコツがいります。

 

よくある残念なパターンは2つ。

  1. タンギングが不十分で、一つひとつのスラーがつながって聞こえる
  2. スラーの終わりをプツっと切ってしまって、スタッカートがついているように聞こえる

特に2.のパターンは、多くのフルート奏者が陥りやすいミスです…

(大学時代、サックス科の先生に「フルートはいつもスラーを切る」と指摘されたこともありました…)

 

では、スタッカートをつけずにスラーを表現するためには、どうしたらいいのでしょうか?

 

 

 

5番でも解説したようにスラーには「スラーがかかっている最初の音が一番強い」という性質があります。

 

 

よって、上の画像のようにスラーに合わせてディミヌエンドをすれば、スラーを明確に表現できるというわけです。

 

タンギングを強めることで表現することも可能ですが、荒っぽく聞こえてしまったり、音量を小さくする場面では使えなかったりするので、ディミヌエンドでの表現を身につけましょう!

 

 

最初はかなりテンポを遅くして、ディミヌエンドで演奏できているか丁寧に確認しながら演奏します。

 

速いテンポでは音量の変化が小さくなってしまうので、まずはオーバーに練習しておくことがポイントです。

 

そうしておけば、実際のテンポで演奏するときにタンギングに頼らずスラーを自然と表現できるようになります!

 

 

次に、スラーの中につけられたアクセントについて考えていきましょう。

 

まず、アクセントを見つけたときに無条件で強く演奏することは避けてください!

 

音楽以外の場面でも「アクセントを加える」といったように“アクセント”という単語は使いますよね。

 

こういったことから連想できるように、アクセントは「目立たせたい・注目してほしい」部分につけられるものです。

 

決して強く演奏するだけがすべてではありません。

 

 

 

仮にアクセントがついている「シ」を強く吹いてほしいなら、スラーを1拍ずつかけてもいいはず。

 

それをしていないということは、3拍目と4拍目を一息に演奏してほしいという思いが前提にあるということです。

 

ですので、このアクセントは流れの中でさり気なく加えてほしいのではないでしょうか。

 

瞬間的にヴィブラートをかけたり、ほんの少し息を多めに入れてあげるとうまくいくはずです。

 

 

次に、速いテンポでのプラルトリラーをどう演奏するかですね。

(プラルトリラーの説明は前回の解説をご覧ください

 

ここのスラーも終わりを切ってしまいやすいので注意しましょう!

 

 

本来、プラルトリラーは①のように演奏するものです。

 

しかし、テンポが速いと演奏するのが難しいこともありますよね。

 

その場合は②や③のように演奏するのも一つの方法です。

 

②はテンポに追いつかないとき、③はリズムがつかめないときに試してみると装飾音符が入るようになります。

 

そして練習していく中で余裕が出てきたら①のように演奏できるように挑戦していきましょう♪

 

 

a tempoからは冒頭と同じ流れですので割愛して、曲の終わりを見ていきます。

 

ひとつ気になるのがスラーのかかり方です。

 

オクターブを変えただけの繰り返しなのに、スラーのかかり方が変わっています。

 

このような繰り返しは、同じアーティキュレーションで揃えることがほとんどなので、どちらかに合わせたほうが自然な気がします。

(個人的には後半のスラーに合わせるかな…)

 

また、1オクターブ低いほうはトリルになっていますが、このテンポで16分音符にトリル(複数回2つの音を往復)することはほぼ不可能なので、プラルトリラーと同じように演奏して問題ありません。

 

 

そして最後の4小節間は、ちょっとした違いでドラマティックな演奏にも面白みのない演奏にもなる重要な部分です!

 

クレッシェンドしか書いていないからといって、今までと同じテンポで音量を上げるだけではもったいない演奏になってしまいます。

 

 

よりドラマティックに、華やかに曲を締めくくるコツは3つあります。

  • 上行形の音階をいかしてテンポを上げる
  • 2回目の音階の始まりを食い気味かつ長めに演奏する
  • フェルマータの前の4分休符を少しためる

ある種、テンポ通りに演奏しないことで緊張や興奮を生み出すことができます。

 

インスタで演奏例をアップしました!

 

2枚目(2ページ目?)が動画になっていますので、参考になればと思います♪

 

 

この投稿をInstagramで見る

佐藤美晴@横浜市みはる音楽教室(@miharusato_flute)がシェアした投稿 -

まとめ

 

音階や分散和音といったシンプルな音の並びは、何もしなければ何も起こらずに過ぎ去ってしまいます。

 

「素材の味」といえば聞こえがいいですが、そればかりでは飽きてしまいますよね。

 

ところどころにある聞いてほしいポイントを少し目立たせてあげるだけで、ガラッと雰囲気は変わります。

 

いろいろ試してみて、いい塩梅を目指しましょう!